卵子の老化
妊娠を希望するの女性にとって看過できない問題である「卵子の老化」への有効な対策についてまとめました。
Study 01
データで見る卵子の老化
実際のところ卵子の老化がどの程度不妊に関係しているのかのデータをご紹介します。
広く知られているように年齢と妊娠率には大きな相関関係があり、35 歳前後を皮切りに妊娠率の減少や流産率の増加が顕著となってきます。(※1)。
さらにおおむね37 歳から44
歳の間のどこかの時点で妊孕性(妊娠する力)は消失します(※2)。
年齢と妊娠率の変遷
卵子の「数」と「質」の変化
加齢による卵子の数と質の変化のデータを見ると、卵子の元となる卵母細胞の「数」は排卵が起こり始める思春期頃には約30 万個が残っていますが、加齢とともに減少し、37
歳頃を過ぎると急速に減少します(※3)。この卵母細胞は生まれる前に作られ、その後、新たに増えることはないため、卵子の「数」を補う効果的な治療は今のところ存在しません。
一方で、卵子の「質」の低下については様々な研究が進んでおり、加齢による妊娠率の減少の主な原因とされています。実際、若年女性がドナーとなって提供された卵子を用いた場合、加齢によって生産率(
生まれる率) に減少は見られないという治療成績が報告されています。(※4)
このことから、卵子の質の低下を予防する治療方法の確立が期待されています。不妊症には様々な原因が存在しますが、実際に女性の不妊原因を調べたデータによると、その約半数が原因不明となっています。一般的に原因の特定できない不妊症の多くは加齢とともに進行する卵子の老化により起こる事が多いとされます。不妊症検査をしても他に原因が見つからないのになかなか妊娠しない状態というのは、卵子が加齢により変性・細胞死しているため受精が成立しない、細胞分裂・胚の成長が止まってしまうケースが考えられ、これは一般不妊検査では診断がつかないケースが多いです。このことは原因不明不妊には卵子の老化が潜んでいると言えるのです。
<参考>※1
日本産科婦人科学会 2012 年生殖補助医療データブック / ※2 日本生殖医学会 不妊症Q&A / ※3Baker TG. AQuantitative and Cytological Study of
Germ Cells in Human Ovaries.Proc R Soc Lond B Biol Sci. 158: 417-433, 1963 / ※4 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
2003ART Success Rates in USA / ※5 Melatonin protects oocyte and granulosa cells from reactiveoxygen
species during ovulation process within the follicle.(TAMURA HIROSHI) ※6 社団法人日本産婦人科医会 不妊症のケア 2001 を改変
女性の不妊原因とは
卵子の老化がもたらす不妊への影響
不妊症には様々な原因が存在しますが、実際に女性の不妊原因を調べたデータによると、その約半数が原因不明となっています。一般的に原因の特定できない不妊症の多くは加齢とともに進行する卵子の老化により起こる事が多いとされます。
不妊症検査をしても他に原因が見つからないのになかなか妊娠しない状態というのは、卵子が加齢により変性・細胞死しているため受精が成立しない、細胞分裂・胚の成長が止まってしまうケースが考えられ、これは一般不妊検査では診断がつかないケースが多いです。このことは原因不明不妊には卵子の老化が潜んでいると言えるのです。
Study 02
卵子の老化対策 最新版
加齢とともに増える卵子の細胞死や変性卵に対策をする方法を紹介します。
これまで卵子の老化には、ホルモンの不足や加齢による卵母細胞の残数の不足が要因として考えられてきましたが、近年、「顆粒膜細胞」の機能不全がその主要因として注目を集めています。
顆粒細胞は卵子を取り囲む細胞で、卵子と情報交換しながら卵子の成熟等の機序調整の役割を担っています。加齢とともに酸化ストレス(活性酸素)が増加することによる顆粒膜細胞の機能低下が卵子の質低下を引き起こす大きな原因の一つと考えられているため(※1)
顆粒膜細胞の保護を行うことが不妊治療において重要となることが示唆され、研究が進められているのです。
※1 Melatonin protects oocyte and granulosa cells
from reactiveoxygen species during ovulation process within the follicle.(TAMURA HIROSHI)
卵子の老化と顆粒膜細胞
ウムリンによる顆粒膜細胞の保護活性化
ここで前述の顆粒膜細胞の保護活性化に有効なエビデンスが確認された梅抽出物ウムリンによ卵子の老化抑制作用について紹介します。最新研究においてウムリンの顆粒膜細胞保護機能が正常な性ホルモンの生成・分泌を促進するメカニズムが解明に向かっています。ここでは2014 年に日本授精着床学会雑誌にて紹介されたウムリンの研究論文について紹介します。
対象・方法
以前から体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(以下、ART)を受けてきたが妊娠できなかった難治性の不妊患者18 人(平均年齢39.2 歳)に対し、臨床研究が行われました。
DHEA
を50mg/dayでART 周期の2 か月前から連日投与し、IVF 又はICSI を施行しました。この18 例のうちDHEA 服用後も妊娠に至らなかった症例のうち9 例にDHEA
を50mg/dayに加えて梅抽出物ウムリン12ml/day を2 か月投与後IVF 又はICSI を施行し、それぞれの周期の採卵数と血清エストラジオール値、受精率、妊娠率について比較検討しました。
治療成績
各投与前の平均採卵数と血清エストラジオール値。治療周期が経過するに従い減少していることが確認されました。
平均受精率を比較すると、無添加よりもDHEA、DHEA のみよりもDHEA&ウムリンの方が、有意に高くなりました。
出典:宇都宮洋才博士研究資料
無添加周期では顆粒膜細胞の細胞死と変性が見られた一方、DHEA と梅抽出物周期では、顆粒膜細胞の状態が良いまま推移しました。
同一人物の顆粒膜細胞。無添加周期では胚の変性が見 られた一方、DHEA& 梅抽出物周期では顆粒膜細胞の状態が良くなり受精卵も良好に発育しました。
梅単独周期の臨床研究も進行中
10 症例:29 歳~ 41 歳(平均年齢 35.6 歳)に 治療周期の2か月前から梅(梅:UMULIN®)12ml/day を投与後、IVF を施行しました。
▼
10症例中6例が妊娠成立、4例が出産成功
結果と考察
・難治性不妊患者にDHEA と梅抽出物を投与することにより平均受精率、 妊娠率の有意な向上が確認されました。
・梅抽出物投与によりDHEA 単独投与で妊娠しな かった9 症例中5
症例で妊娠が成立しました。
・別の不妊患者集団でも梅抽出物単独で10
症例中6例において妊娠が成立しました。難治性の不妊患者に対して梅抽出物を投与することにより卵の質が改善し、治療成績を改善させる可能性があることが示唆されました。
梅抽出物による卵子の老化抑制メカニズムの考察
通常、卵子の成長に重要な役割を果たす顆粒膜細胞は酸化ストレスによりアポトーシス(細胞死)を引き起こしますが、梅抽出物ウムリンはこれを阻止し、当細胞を保護する働きがあると考えられます。
酸化ストレスによる細胞死に対する梅成分3,4-DHBA の効果を検討
梅成分3,4-DHBA は細胞死を抑制することが明らかとなりました。
梅抽出物に含まれる3,4-DHBA
は酸化ストレスによるアポトーシス(細胞死)を抑制し顆粒膜細胞を保護することで卵子の老化を防ぎ受精率の上昇に寄与することが示唆されています。これは3,4-DHBA
が有する強い抗酸化作用によるものと推察されます。
臨床試験後も、現場では研究が続いており、現在200 を超える症例データが蓄積されております。
出典:宇都宮洋才博士研究資料
最近のコメント